堕ちていくわたし
 そもそもの原因は、お父さんの浮気でした。

 ずっと後になって、お母さんから聞いた話によると、お父さんの浮気相手の女のひとが、家に電話をかけてきたそうなのです。そのひとは、「自分は彼のことを愛しているし、彼も自分のことを愛してるの。結婚の約束までしたわ。だから早く彼とは別れて。」と、お母さんに冷たく言い放ったそうなのです。それが事実なのかどうかをお父さんに問いただしたところ、お父さんがそれを認めてしまったので、あのような口論になったということでした。

 この事件以来、お母さんとお父さんのあいだに会話はなくなり、わたしたち家族は、どんどん暗くなっていきまた。そこには、以前のような温かさはなく、ただただ重く、どんよりとした冷たい空気があるだけでした。二人は、わたしに対しては、決して邪険に振舞うようなことはなかったのですが、いつも、お母さんはお父さんの、お父さんはお母さんの悪口を言っていました。

 このような家族の変化と同じように、わたしの心もどんどん暗く、冷たいものになっていきました。学校でも、以前とは別人のようにまったくしゃべらなくなり、仲良しだった二人のことも避けるようになりました。(そしてまた、彼女達もそんなわたしのことを避けるようになりました。)

 また、わたしのことを気遣ってくれていた近所のおじいちゃん、おばあちゃんとも口をきかなくなりました。わたしは自分の殻に閉じこもるようになったのです。
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